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2014年御嶽山水蒸気噴火の直前過程の把握 研究活動 | 研究/産学官連携

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平成 27 年 7 月 21 日

2014 年御嶽山水蒸気噴火の直前過程の把握

名古屋大学大学院環境学研究科(研究科長・神沢 博) ・地震火山研究センターの加藤

愛太郎(かとう あいたろう)准教授らは、 2014 年御嶽山水蒸気噴火(用語 1 )に関連

する山体直下の火山性の地震活動を解析することで、水蒸気噴火の直前過程を捉える

ことに成功しました。

2014 9 27 日に御嶽山において水蒸気噴火が発生しました。本研究では、噴火

の直前過程の理解を深めるために、噴火前後に起きた山頂付近の微小な地震活動につ

いて解析を行いました。本研究により決定された地震は、北北西 - 南南東方向(長さ

0.7 km ×幅約 1.5 km )に並び、その方向は噴火の際に生じた火孔列の方向と概ね

一致します(図 2a ) 。この山頂付近の地震活動は 831 日から開始し、 96 日頃か

ら活動度が徐々に増え、9 月 11 日に活動のピークを迎えました(図 3) 。通常の地震

よりも低周波成分に卓越し、流体の関与が考えられる低周波地震( LP )も 911

頃から増え始め、9 月 15 日頃に最も活発化しました(図 3) 。これらの地震活動は、

熱水が多数の微小断層へ浸透することで発生したと考えられます。その後、地震活動

度は減少傾向を示しながら継続し、9 月 27 日に水蒸気噴火に至りました。噴火が起

きる直前の時間帯に着目してみると、噴火の約 10 分前から地震活動の発生域が北北

西-南南東方向に拡大しながら浅部へ移動しました(図 4a, 4b) 。同時間帯には、火

山性微動(用語 2)の活発化や山体上がりの傾斜変動が火口付近において捉えられて

います(気象庁) (図 4c, 4d) 。このことは噴火直前の約 10 分前から、高圧の水蒸気

やガスが火口へ向かって鉛直なクラック内を上昇し、噴火に至ったことを示唆します

(図 5b ) 。

この研究成果は、日本の国際学術誌(Earth Planets Space)の電子版に掲載されまし

た。

(2)

【ポイント】

2014年御嶽山水蒸気噴火に関連する地震活動の時空間発展を捉えました。

○噴火直前の約 10 分前から水蒸気やガスが火口へ向かって上昇していったことを示唆する地震 活動域の急激な拡大を検出しました。

【背景】

御嶽山は乗鞍火山列の南端に位置する成層火山で、標高3,067mと国内では富士山に次いで高い 火山です。有史以降初めての水蒸気噴火が1979年に発生し、それ以降、1991年と 2007年にも、 ごく小規模な水蒸気噴火が起こりました。2014 年の噴火は 1979 年の噴火と同程度、もしくは若 干小さいと推定されています。また、火孔列の位置も山頂南西側の地獄谷内に1979年の火孔列に 並行するように存在しています。一般的に、水蒸気噴火の規模やタイミングを事前に正確に予測 するのは困難です。というのも、水蒸気噴火に至る直前過程については、未解明な部分が多く残 っているからです。本研究では、山頂付近で発生した噴火前後の地震活動を詳細に解析すること で、水蒸気噴火に至る直前過程の理解を深めることを目的としています。

1.御嶽山のテクトニクス図

(a)黒 色 の 四 角 形 は 本 研 究 の 解 析 領 域 を 示 し ま す 。 赤 色 実 線 は 沈 み 込 む フ ィ リ ピ ン 海 プ レ ー ト (PHS)上面、青色破線は太平洋プレート(PAC)上面の深さをそれぞれ示します。赤い△印は活火 山の分布を表します。

(b)解 析 に 用 い た 地 震 観 測 点 分 布 を 示 し ま す ( 青 色 □ 印 「Short-period(1s)」 )、 赤 色 □ 印

Broadband」)。観測点は名古屋大学、気象庁、防災科学技術研究所、長野県、岐阜県によって 管理・運営されています。山頂(赤色△印)南西側にある黒色○印は解析対象の地震活動の震 央分布を、緑色の矢印は2014年水蒸気噴火直前の約10分前から観測された傾斜変動の変化分 を表します。

(3)

【研究の内容】

2014831日から9月にかけて発生した比較的規模の大きな山頂付近の地震について、御 嶽山周辺域で観測された地震波形データからP波とS波の到達時刻を読み取り、震源の再決定を おこないました。地震波形データは、名古屋大学、気象庁、防災科学技術研究所、長野県、岐阜 県によって管理・運営されている地震観測点で記録されたものを使用しました(図1)。再決定 された地震分布は、北北西-南南東方向(長さ約0.7 km×幅約1.5 km)に並び、その方向は噴火 の際に生じた火孔列の方向と概ね一致します(図2a)。次に、20148月から9月までに得られ たすべての地震波形データに対して、震源再決定を行った地震の波形との類似性によるパターン 認識検索をしたところ、通常の処理では検出が困難な非常に小さな地震を抽出することができ、 これによって山頂付近の地震活動の噴火前後の詳細な時空間発展が明らかになりました。図3に 示したように、地震活動は831日下旬から開始し、96日頃から活動度が徐々に増え、9月 11日に活動のピークを迎えました。通常の地震よりも低周波成分に卓越し、流体の関与が考え られる低周波地震(LP)も911日頃から増え始め、915日頃に最も活発化しました。これ らの地震活動は、熱水が多数の微小断層へ浸透することで発生したと考えられます(図5a)。

噴火後地震活動が活発化し、地震活動域は北北西-南南東に拡大しながら浅部へ移動していま す。噴火が起きる直前の時間帯に着目すると、噴火の約10分前からこのような浅部への拡大移 動が急激に始まったことがわかります(図4a4b)。同時間帯には、火山性微動の活発化と、山 体上がりの傾斜計変動が火口付近において捉えられています(気象庁)(図4c, 4d)。つまり、 噴火直前の約10分前から、高圧の水蒸気やガスが火口へ向かって鉛直なクラック内を上昇し、 噴火に至ったことが示唆されます(図5b)。

2.再決定された地震の分布

(a)震央分布を示します。赤色△印は山頂、黄色○印は噴火前の地震、青色○印は噴火後の地震、 黄色の☆印は低周波地震(LP)、白色に塗りつぶされた領域は火孔列を表します(国土地理院)。

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(b)西南西-東北東方向の深さ断面図を示します。

3.山体直下の地震の時空間発展図

(a)北北西-南南東方向に投影した地震の時空間発展。縦軸に距離(km)、横軸に日付を示します。 赤色☆印は低周波地震(LP)を表します。○印の大きさはマグニチュードによってスケールさ

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れています。破線が噴火時刻に概ね対応します。 (b)地震の深さ変化。

(c)地震の積算個数の時間変化。青線と赤線が、火山構造性地震と低周波地震に対応します。 (d)地震のマグニチュードの時間変化。

4.噴火直前の山体直下の地震の時空間発展図

(a)北北西-南南東方向に投影した地震の時空間発展。縦軸に距離(km)、横軸に2014927日 1130分からの経過時間を示します。灰色線が噴火時刻に概ね対応します。

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(b)地震の深さ変化。

(c)山頂に最も近い気象庁の観測点(V.ONTN)で記録された火山性微動の波形。黒色の線は地震波形

412 Hzのバンドパスフィルターを適用)、赤色の線はエンベロープ波形(14 Hzのバン ドパスフィルターを適用)を表します。

(d)気象庁の観測点(V.ONTN)で記録された傾斜計変動。赤色と青色の線は、傾斜計の南北、東西成 分をそれぞれ示します。

5.噴火前の山体直下の概念図

(a)2014 9 月中旬頃。地震活動は熱水が多数の微小断層へ入り込むことで発生していたと考え られます。

(b)噴火直前の約10分間。高圧化した水蒸気やガスが火口へ向かって鉛直なクラック内を上昇し、 噴火に至ったと考えられます。

【成果の意義と今後の課題】

今回の研究成果の意義は、1)噴火の約2週間前に活発化した山頂付近の地震活動には熱水が関 与していたこと(図5a)、2)今回の噴火に至る水蒸気やガスの上昇過程を示唆するような急激な 地震活動域の拡大がたった噴火直前の約10分間であったこと、を捉えた点にあります(図4, 図5b)。

9月中旬から下旬にかけて山頂付近の地震活動度が減少傾向を示す過程で、水蒸気噴火が突如 発生しました。本研究により、噴火直前の約10分間に水蒸気やガスの上昇過程を示唆するシグ

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ナルが捉えられましたが、何がきっかけで噴火へと遷移したのかは「謎」のままです。噴火の数 日前から、それ以前に比べて規模が少し大き目の地震が起きていた点以外、地震活動に変わった 様子は見られませんでした。この点については今後の研究課題です。

【用語説明】

(注1)水蒸気噴火:マグマにより熱せられた熱水が急激に気化・膨張することで爆発的に噴出す る噴火様式のことです。マグマが直接関与しないため、噴出物中に新鮮なマグマ物質が含まれな いという特徴があります。

(注2)火山性微動:火山体内のマグマや熱水の移動、火山ガスの発泡などによって発生すると考 えられている地面の連続した震動のことです。

【論文名】

“Preparatory and precursory processes leading up to the 2014 phreatic eruption of Mount Ontake, Japan”

A. Kato, T. Terakawa, Y. Yamanaka, Y. Maeda, S. Horikawa, K. Matsuhiro and T. Okuda 掲載誌:Earth Planets Space

DOI: 10.1186/s40623-015-0288-x

http://www.earth-planets-space.com/content/67/1/111

図 3. 山体直下の地震の時空間発展図

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